ぺこぺこ

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大平さん(「不確かな人格」参照)と仕事をしていたのと同じ現場での話。顔を覚えているのに名前を忘れた。

そのおばあさんは、剛毅な人だった。「わたしゃ、人殺しと強盗以外は何でもやったよ」と語った。終戦直後のどさくさをいかに生きたか、おばあさんの武勇伝の数々を聞いた。

 そのおばあさんが、千葉に新しい家を買って、隠居するとのことで、仕事を辞めることになった。最終日、仕事を終え、永田町の駅で別れるときに、そのおばあさんが、「ありがとう、ありがとう」と振り返りつつ、ぺこぺこと私に何度も頭を下げた。

 人殺しと強盗以外何でもやったという人が、孫ほどの若造に何度も頭を下げた。名前を忘れても、その時のおばあさんの顔は覚えている。


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