ゴルゴの使う格技は何

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 『ゴルゴ13』といえば、日本の劇画史上でも屈指の連載期間を誇る作品であり、多くの人が知っているはずだ。超A級スナイパーであることはもちろん、背後に立たれることを極端に嫌い、後ろに回られただけで反射的に手刀で相手を倒してしまうという習慣もよく知られている。
 要するに、徒手でもゴルゴ13はめっぽう強いということは漠然と知られているわけだが、ではゴルゴ13はどういう格闘術を使うのだろうか。
「チャイナタウン」(リイド社版単行本第37巻所収)という話では、サンフランシスコのチャイナ・タウンを二分する中国人グループ(大陸派と台湾派)の内、台湾派のリーダーの正体を突き止めて暗殺するという作業の必要上から、ゴルゴ13は「周竜明」という中国人拳法家になりすます。台湾派の用心棒、中国拳法家のハンク・趙によって過去に兄を殺された男――というのがゴルゴ13はなりすました男の設定である。「周竜明」(ゴルゴ13)はハンク・趙に会い、兄の仇討ちのため拳法の戦いを挑む。
「おれには、台湾も中国も興味はない。……この命は太極挙のためにある……」
 という科白をゴルゴ13が吐く(一般にゴルゴ13は無口と思われているが、必要がある場合は、割とベラベラしゃべる)。
 そしてハンク・趙との一騎討ち!「キエーッ」「チェースッ」という気合とともに両者飛んだり跳ねたりで一体何派の太極挙だか、よく分からない。この時は引き分け、腕を買われて台湾派の用心棒としてまんまとグループ内に潜入する。
 話の結末のところで、謎のリーダーの暗殺に成功したところへ、ハンク・趙がやってきて、ゴルゴ13の正体も知らずに拳法で立ち向かっていき、射殺されてしまう。
「おれは、こっちの方が専門なんでな……」
 ――とはゴルゴ13の科白。
 このシーンが映画『インディジョーンズ』に応用されたのだという風聞もあるが、とりあえず、ここで押さえておきたいことは、本当の中国人武術家を相手にゴルゴ13が中国武術家として騙し通せた点である。つまり、太極挙は完全に修得していたであろうということだ。
 だが、これは使えるにしても、ゴルゴ13が普段自然に使っている格闘術とは限らない。それに迫る作品が「メジャーオペレーション」(リイド社版第65巻所収)である。過去にベトナム戦争のゲリラ戦において戦線迂回して不名誉を受けた対ゲリラ部隊将校が、そのゲリラ戦で生き残れる人間がいるかどうかスーパーコンピュータにかけたところ、コンピュータのはじき出した答えはゴルゴ13ただ一人であった。
 そして、この将校は、アフガン侵攻のシミュレーションをすると同時に、自分のベトナムでの判断が正しかったかどうかを確かめるためにベトナムのゲリラ戦と全く同じ状況を南米のジャングルに作りだし、そこへゴルゴ13を誘き寄せたのである。
 丸腰のまま二百名以上のアメリカ兵に囲まれたゴルゴ13は一人一撃で倒していく。その様子を望遠の赤外線カメラで監視している将校は部下に問う。
「使っている武術はなんなのだ? 拳法か……?」
 部下はそれに答えて次のように言う。
「私も初めて見る格闘技ですが、日本の古武道のようにも見えます……」
 結局、ゴルゴ13は包囲網を突破し、この将校を射殺。同時に自分の動きを記録したビデオテープも破壊してしまう。ゴルゴ13の格闘術は、ゴルゴ13自身の出自と同じように謎である。

出自が明らかになったとき、この格闘術の正体もわかるのだろうか?

※この原稿は昔、二見文庫のために書いた原稿を改稿しました。


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