音雑感

聞いたことのある音とかそこら辺の話

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■Evening Star

■Fripp & Eno

■1975年発表

 73年発表の「No Pussyfootinng」(直訳すれば“日寄らない”)に続くフリップ&イーノの第2作だが、私は「イブニング・スター」の方を先に聞いたはずだ(随分、昔の話なのでうろ覚え)。フリップのギターの演奏を、イーノがテープ・ループを「演奏」するという共同作業である。フリップのキラキラした感じのリフ、あるいはどこからか、そしてどこまでも続くドローンのようなの音が、重なり漂い、消えていく。

 幼稚園の頃から、つい最近まで歌謡曲が嫌いだった。なんで世の中のほとんどの歌がラブソングなのか、幼児の私は怒り狂っていた。今でも別に歌謡曲が好きになったわけではないが、以前ほど嘘臭い歌が減ったとは言えるような気がする。嘘臭い歌は嘘臭い歌で、確信犯的に開き直った嘘臭さを歌うようになっているようで、これはこれで進化なのかもしれない。

 中学生のときに初めてフリップ&イーノの「イブニング・スター」を聞いたとき、「これが僕の聞きたかった音だ!」と思った。それまで聞いたことのない音であるにもかかわらず、自分にとっては何か懐かしい感じさえあった。聞いては聞かなくなった音楽がある一方で、フリップとイーノはずっと聞くことができる。

 ラブソングと無縁の世界。情緒と無縁の世界。とはいえ、非情であるのでもなく、機械的なものでもない。天国に音楽が流れているのなら、きっとこんな音だろう、と中学生の私は思った。今でも、「そうかもしれない」と思う。


■Not Available

■The Residents

■1978年発表

 訳せば「入手不可」というタイトル。なんでも74年に録音を終了していたが、彼らの理論により、これは発売されることのないアルバムとして制作されたという。レコード会社との契約で、世に出てしまったと彼らの発表にはある(こんなもの邦訳が出るわけがないと思ってレジデンツのガイドブック『Uncle Willie's highly opinionated guide to the Residents』を渋谷のディスク・ユニオンで買ったら、読み終えない内に、なんと邦訳が出た(『踊る目玉に見る目玉』文遊社)。買う人間がどれくらいいるのか、すこぶる疑問だが。)。

 聞いたのはイーノの『Another Green World』よりずっと後だが、作品の録音年代としては、イーノの『Another Green World』が75年発表だから、およそ同時期の音である。で、この2枚が私にとっての架空民族音楽的ポップのお気に入り(CANの曲にも、それに近いものがあるが、アルバム単位では架空民族音楽といえるものはないと思う)。

 「見せるため、あるいは見せられるために存在する? 質問は決して、決してわからない」

 アルバムに収録されている「Never Known Questions」の詞の一節。真意を悟らせない皮肉を延々続ける彼らが素直に美しいメロディを奏でている(「皮肉」の問題については、いずれ随想で取り上げたい)。

 いつでも、その時代の最新テクノロジーを取り入れてきた彼らだが、コンピュータを使うようになってからつまらなくなった。アナログ・シンセ時代の音の方が好きだ。関心が薄くなってから日本盤がボンバ・レコードから発売されるようになった。皮肉なものだ。昔は置いてあるところを探すだけで大変だったのに。

 『踊る目玉に見る目玉』の監修者であり、ボンバ・レコードに携わっている自称「特殊音楽評論家」の湯浅学氏は、レジデンツ、裸のラリーズ、キング・クリムゾンが好きだという。なんか、趣味がだぶってますわ。3者に共通なのは「頑固一徹」というところだろうか。

 レジデンツとラリーズは今は、あまり聞かないのだけど。


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