ぺしぺし

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 世田谷美術館にラウシェンバーグ展を見にいったときの出来事。展示品を静かに眺めていると、どやどやとおじさんの一行が入ってくる。気さくそうだが、見るからに美術や芸術には縁がなさそうな人たちである。壁にかかっている大漁旗を使った作品を指さして

「あんなもん、うちにいっぱいあるぞっ」

と豪快に笑っている。どうやら漁師が生業らしい。団体に配られた観賞券で来たのだろうと私は勝手に推測した。

「これが芸術かい。あはは」

と言って、三輪車の前輪をひっくり返した部分をもつオブジェを、おじさんの一人がぺしぺしと手で叩いた。

部屋の隅にいた学芸員が真っ青になって跳んで来る。私はおじさんのそのストレートな言動に破顔していた。


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