ああ無情

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その少女は3ケタ以上のたし算が苦手だった。苦手というか、できなかった。パートのスーパーのレジではよく数字の打ち間違えをした。レジ自体が計算機能を持つより昔の話である。先輩のパートのおばさんは、そんな彼女を毎日励ましていた。

そんな彼女が計算で大ポカをした日、おばさんはまた彼女を励ました。

次の日、彼女が何か話したがっているように見えたので、おばさんは「どうしたの?」と声をかけた。嬉しそうに、その少女は、当時ではまだ安くない電卓(発光ダイオード表示)を取り出して見せた。これで計算してからレジを打てば間違えないでしょ、と。それは良かったわねとおばさんも笑顔で応えた。けれど、その日に、少女は解雇された。


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